第24話 老舗の名画座
文芸座(池袋)

 

 

 文芸座は池袋駅東口から徒歩3分。歓楽街の中にあった名画座である。97年3月に建物老朽化のため一時閉館。00年12月に新文芸座として蘇った(詳細はオフィシャルサイトを参照)。
ここに関しては改めて書く必要など無いだろう。東京近郊の映画ファンの間では銀座並木座や大井町武蔵野館と並ぶお馴染みの名画座。並木座も武蔵野館ももう無いので現在では貴重な劇場である。当時ここは洋画専門の文芸座と邦画専門の文芸座地下に分かれていた。

 

 

かつての文芸座は新文芸座の隣、下の写真の場所にあった。現在はパチンコ屋になっていてその面影はない。文芸座は昼間は洋画専門館だったので昼に来た事は一度もない。毎週土曜日のオールナイトを何度か観に来た事がある。初めて来たのは1981年3月28日(土)、春原政久監督特集であったと思う。この時がオイラにとって記念すべきオールナイトデビュー!であった。オイラは基本的に夜更かしは苦手でこの頃は夜11時以降まで起きているのもキツかった。


この時のラインナップは
青春をわれらに(56年白黒 脚本・笠原良三 出演・伊藤雄之助、左幸子、フランキー堺)
・童貞先生行状記(57年白黒 脚本・柳沢類寿 出演・フランキー堺、香月美奈子、小杉勇)
・東京のバスガール(58年白黒 脚本・西島大 出演・美多川光子、コロムビア・ローズ)
・都会の怒号(58年白黒 脚本・小布施玄 出演・筑波久子、楠侑子、青山恭二)

眠い中観たので、この4本の内容は殆んど記憶にない。もう1回観たいよ。オールナイトは全席指定席で前売り券は入口脇にあった『文芸シネブティック』の窓口で購入する。このシネブティックは一坪くらいのスペースで前売り券の他、映画関係の書籍を販売していた。キネマ旬報のバックナンバーも売っていて結構充実していたナ。でも一度、キネマ旬報に連載していた『日活アクションの華麗な世界』を立ち読みしていたら店員に「いい加減にしろ!」と怒鳴られた事があった(笑)。この店員は30歳くらいのヒッピー風の無愛想な男であまり接客に向いているとは思えない野郎だったナ。とはいえ立ち読みしていたオイラも悪いのだからあまり糾弾できないネ(笑)。あの店員はバイトだったのかな?それともまだ文芸座で働いているのかなぁ?(だとしたらもう50代だ。)
 2度目に来たのが同じく81年5月2日(土)、鈴木清順オールナイト。この時、文芸座ではデビュー作から『悲愁物語』までの上映可能な清順作品を6週間?にわたってオールナイトで上映していたのだ。当時の手帳を見ると計5回通っている。5月2日はその1回目の上映だった。初回はオールナイトにも係わらず超満員だった。当時は『ツィゴイネルワイゼン』が公開された頃でちょっとした清順ブームであった。しかし満員なのは最初だけで回を重ねる毎に客が減り始め、後半最後の方はガラガラであった。ブームなんてモノは所詮は一過性のもの。混んでるとイヤだから一般人は来るなよ。日活映画の理解者だけが来れば良いんだ。勝手にそう思ってマシタ。このオールナイトで観た作品は下記の通り。

『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』
、『恐怖劇場アンバランス・木乃伊の恋』、
『踏みはずした春』
、『悪魔の街』、『影なき声』『港の乾杯・勝利をわが手に』
『素っ裸の年齢』
『けものの眠り』、『密航0ライン』、『すべてが狂ってる』
『13号待避線より・その護送車を狙え』
、『くたばれ愚連隊』、『散弾銃(ショットガン)の男』
『東京騎士隊(ナイト)』
、『峠を渡る若い風』、『無鉄砲大将』『野獣の青春』
『ハイティーンやくざ』
、『海峡血に染めて』、『らぶれたあ』『百万弗を叩き出せ』
『刺青一代』
『悪太郎』『悪太郎伝・悪い星の下でも』『春婦伝』

 


『恐怖劇場アンバランス・木乃伊の恋』だけは日活映画ではない。円谷プロ製作のTVドラマ。上記の作品の中で『悪魔の街』だけ再見の機会がないために記憶が殆んどない。(あんまり面白くなかったというのもあるが・・・・)オールナイトは苦手だよ・・・・眠くてさぁ。
 文芸座に行くには風俗店ひしめく歓楽街を抜けていくのが一番近いのだが、客引きが多いのでオイラは明治通りから通っていた。現在はそれほどしつこい客引きはいないのだが、80年代は規制が現在より緩かったのか?たくさんいたのヨ。気の弱いオイラでは無事に突破する自信がないため、ちょっと遠回りしていたのだ。(遠回りといっても大した事は無いが・・・・)そんな学生時代にオールナイト観に通った文芸座だが、就職して生活が変わったため全く行かなくなった。そうこうしているうちに97年3月に一時閉館、00年12月に現在の新文芸座として蘇った。そして来たのはまたまたオールナイト、2001年7月28日(土)。このときは小沢昭一特集であった。上映作品は『大当たり百発百中』『洲崎パラダイス赤信号』、『「エロ事師たち」より人類学入門』。この日は上映前に小沢昭一のトークショーがあって撮影の裏話を披露してくれた。印象に残っているのは『洲崎パラダイス』には主題歌があったという話。劇中に蕎麦屋の出前持ち役の小沢が自転車に乗りながら歌を歌っているシーンが数ヶ所ある。この歌は細切れになっているのだが、これが主題歌で繋げると一つの曲になる。映画の撮影中、小沢は川島雄三監督に呼ばれて「この映画には主題歌があるから・・・」と言われ劇中で歌ったのだそうだ。(作詞をしたのはこの映画の助監督をした今村昌平。)小沢氏はこの歌を憶えていてアカペラで歌ってくれました。全盛期の日活を語れるのは宍戸錠だけではない。小沢昭一にも期待したいヨ。このときのオールナイトは日活映画ファンというよりもラジオの『小沢昭一的こころ』ファンの人が多かったようだ。結構混んでいた。オイラのこの夜のお目当ては『大当たり百発百中』。82〜83年頃に文芸座地下で観たのだがストーリー等、全く記憶が無かった。トークショーの後、『大当たり・・・』だけ観て帰りました。『洲崎・・・』、『人類学・・・』はビデオも持っているから無理して観る必要はない。夜は苦手なのヨ。
 新文芸座では入場すると『しねういーくりい』という小チラシをくれる。これには上映スケジュールの他、表紙には短いコラムが書いてある。これは旧文芸座時代からやっていた事で今だ健在なのはウレシイ。文芸座はオイラにとって学生時代の思い出の名画座の一つです。館内の治安も良いので女性でも安心して来る事が出来るヨ。
また日活映画やってくらハイ。

 

新文芸座詳細データ
オフィシャルサイト参照